古傷

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「あっ、て言うか…ヒモより酷いのか ホントの赤の他人養うんだから」 「やっ養うってッッ――…ありえないから、そんな事ッッ!!」  昼休み、会社近くの店でランチのパスタを頬張りながら、今朝までの私の話にケラケラと笑い声を上げる里子に  私は、不機嫌さから思わず眉を潜めつつ、そんな里子の顔を恨めしげに睨み上げていた。  彼女、福田里子は、私と同期入社で編集の方を担当している。初めて一緒に担当したページで意気投合し、気がつけばこうして食事をしながらプライベートも語り合う仲になっていた。  歯に衣を着せないサバサバとした性格の里子を私は、好ましく思いつつも、こういう場合のかなりの辛辣な物言いには、いくらか腹もたってしまう。  そんな私の心内を知ってか知らずか、里子は、手にしていたフォークをパスタ皿の上でクルクルと回しながら私を振り返った。 「だから、止めとけって散々いったじゃん? そんな上手い話なんて無いんだってさ」 .
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