プロローグ

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 ちなみに叔父は俺の母親の弟で、40の大台を超えたが、未だに独身貴族を満喫している。住居は祖父(俺にしてみれば母方の曾祖父さん)の持ち物だった一戸建てを引き継いでおり、住人が一人増えても部屋の心配は必要ないという。  仕事はフリーライターだか、よく分からない物書きをやっており、家を空けることもしばしばだとか。母親が叔父に俺の話を持ちかけたとき、叔父は留守番役に丁度いいと二つ返事でOKサインを出したらしい。  件の叔父の家まではここから下り方面へ二駅ほど進んだ駅のすぐ近くだという話しなのだが、その下り方面への電車が乗り換えであと一時間も待つ必要があった。 「次の電車まで一時間とか、マジかっ!」    空に向かって呟く。  口には出さず、心の中でこのド田舎めっ!! と続けたのは内緒だ。現地民に殴り殺されかねない。  きっとこういう街の住人というのは、愛県心とか地元への愛着が凄いに違いない。  ……分かってる。偏見ということは分かっているのだが、一度身についた偏見というのは中々消えないものなのだ。  正月に絶対絵馬を書かない友人の持っている感覚と、似たようなものなのかもしれないが。 『――――――――――――』  暇を持て余していると、何やら駅前が騒がしくなってくる。  周囲の人々の動きも、どことなく他所他所しい。 『我々虎龍会は――――!!』  その理由は、これか。  黒塗りの大型車両が駅前を陣取り、大音量で軍歌を流していた。  車両には巨大な日章旗が描かれている。
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