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右翼の街宣車って、マジかよ。
街宣車の周りでは体格のいいお兄さん達が数人、声を張り上げていた。
何でもゴルフ場の開発に反対だとかウンたら。
既得権益に反対することで利益を上げる人間がいるとは聞いたことがあるが、彼らがその類なのだろうか。
ともかく、あくまでも一般人である俺が関わるような人種でもないし、好んで関わる理由もない。
人の流れに合わせ、俺も駅の中へと引っ込もうとしたが――――その間際。
俺の網膜は信じられない情報を捉えたのだった。
「お前ら。うるせぇんじゃ、コラァァァァ!!」
怒声。鈍い打撃音。
街宣車を囲むように直立していた、体格のいい兄ちゃんの一人が「ぐっ!」っていう唸りを発し、地面に倒れこむ。
何が起こったのか、理解している人間は存在しなかったと思う。
駅へと向かう一般人の群れ。
その中の一人である俺。
街宣車の周りの皆様。
誰もが、目の前の情報を的確に理解することは困難だった。
いいか、落ち着け。
こういう時こそ、物事の傾向を見極めろ。
事実を事実として認識するんだ。
簡単だ。難しいことじゃない。
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