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水路に着いたジョージは、定期船の時間を調べるべく予定表の前に立った。
が、その必要は無かった。水路の向こうから、ギィーギィーとオールと船の軋む音が聞こえてきたからだった。
「おっちゃん。この船、水宮行くかい?」
「ああ、水宮経由、スラダ通り行きだよ。乗るなら早くしな」
「あいよ、ちょっくら失礼」
タイミング良く現れた定期船に飛び乗ると、船の舳先に見慣れない衣装の人影があった。
服の材質はシルク。金の糸で飾られた、シルクのローブだな。頭に砂漠地方の民がつけるヴェールをつけていた。
それは、如実に身分の高さを窺わせいた。はっきり言ってしまえば、あちこち痛んだゴンドラには不釣り合いな程に、その人物は艶やかだった。
ヴェールの下に見える紅の入った唇が印象的だ。
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