黒い飲み物

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「あんた、この街は始めてかい?」  ジョージは、にこやかに話し掛けた。少しだけ馬鹿にしたような響きがあったかもしれないが、気のせいだろう。  話しかけられた女は、驚いたように身を震わせたが、すぐに立ち直って笑顔を作った。最初想像していたような、大人しい笑顔ではなく、子供のような無防備な笑顔だった。 「はい。本当に水が沢山あるんですね。私びっくりしてしまいました」 「ここには、何をしに来たんだい?内海を周遊する豪華客船にでも?」  ジョージは、穏やかにだが職務質問している自分に気づいていた。  ナンパのつもりが、職業病が首をもたげてきたらしい。 「いえ、私水宮に用があるんです」 (水宮に用事?砂漠の民が?あれかな、水の取引に関する交渉とか?いや、だったらこんな所にいるはずがないよな。そんな大役なら、水宮からしても賓客だ。水宮近くの高級旅館でお持て成しだろ。なんでこんな辺鄙な所にいるんだ?)  ジョージが黙っていると、女は不思議そうに首を傾げた。  それは随分と可愛らしいしぐさで、ジョージは警戒心が溶けていくのを感じた。 (ま、大した用事じゃないだろ)  ニヤニヤしながら、そう結論づけたのだった。
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