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ジョージが上機嫌に貿易都市マルクの建物や歴史について語っていると、ゴンドラが緩やかにスピードを落とした。
「ほら、あんたが向かってる水宮だ。立派なもんだろう?」
船頭が指し示した先には、巨大商船が丸ごと入るような入り口を備えた巨大な問と、それを丸ごと飲み込む神殿がそびえ立っていた。
「ひゃぁぁぁぁ……」
砂漠の女は呆然とそれを見上げた。首都の城と同等の高さがある。
数万人が常に中で動き回っていると言われる巨大建築だ。
水精霊の手伝いで鋭利に削られ、磨かれた外壁と無数の彫刻は、太陽の光を受けて乱反射していた。
神殿というと厳ついイメージがあるが、水宮はその美しさの割には親しみ易い淡い色合いだ。素材はほとんどが雲母でできている。
「そんなに緊張するこたないさ。神官達は皆新設だからな」
と言いながら、ジョージは年上の幼なじみを思い出していた。
勝ち気な性格で、人の役に立つのが大好きな、一言で言えばお節介焼きの。そいつが今、水宮で神官をやっているのだ。
ゴンドラは、ゆっくりと参拝者用の水路に吸い込まれていった。
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