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ここに月明かり以外は何も無い。
「ハァ…ハァ、どうして、ここにはないと……ッ」
「おや。神官さん。」
暗闇からの声は狩人の誘い。
「何を焦っておいでです?」
「ッ!!!だ、誰だッ!!」
「クス、誰って……ねぇ…。」
月に影が伸びる。
神官の背後で高く。
「―Chaice.」
ザンッ!!
コテン、コテン…
「排斥完了。」
相も変わらず、相方であるレイは楽しそうだ。
クェイも最初は戸惑いさえ見せたが今は慣れつつあった。
「ちぇッ、血着いちまった。」
今回ばかりは囮役だったレイが苛立ち気味に呟いた。
神官にあまりよい思い出は無いのだと、珍しくこの男が嫌がったから殺す方を受け持ったのだが。
いつもはこちらが血まみれなんだ、とクェイは思う。
すると、すぐににょきりと悪戯心が生えてきた。
こいつは口では俺に勝てまい。
クェイは微かに笑んだ。
「舐めたら?」
「舐めるかーッッ!!!!!」
「冗談だってば。」
「俺はさっきからお前への疑問が浮かぶばっかりなんだが…。」
「大丈夫。俺もだから。」
そういうクェイをレイは横目で睨みながら、ポケットの中に偶然あったティッシュで服を乱雑に拭る。
クェイは小型ナイフに付着した血を丁寧に拭き取った。
「ッし!!帰るか。」
「早く風呂入らないとなー。」
「あぁ、もう血でベトベトだ…気持ち悪。」
「(たまにはいいんじゃないか?)」
夜は深く、梟の声がした。
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