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三月も終わりが近づき、春休みについての話題が尽きない頃。
俺はいつもと変わらず自分の教室の扉を開き、中へと入る。
当たり前だけど、教室内は昨日までと、何の変化もない。
皆がわいわい騒ぐ、何てない平凡な日常。
友達と挨拶を交わすと、教室内の後ろの方へと向かい、自分の席へと腰をおろす。
ここは、一番後ろの、六列あるうちの廊下側から二番目の席。
名前の順で一年間同じ席だったけど、本当にこの席はベストだったと思う。
一年前、左隣の席の生徒が言っていたセリフを、今はとても共感できる。
しかしその人物の席は、何故だか空席。
いつもなら、俺より先に来ているはずなのに。
チャイムが鳴るまで、あと五分。
やっぱり、あれが原因だったんだろうか……いや、絶対そうだ。
思い出すと気恥ずかしくなって、笑みを浮かべてしまいそうになるのを、必死でこらえた。
何もないところで笑みを浮かべるなんて、傍目から見ればかなり気持ち悪い光景に映るだろうしな。
昨日で俺は、16歳になった。
三月生まれって、結構遅生まれだよなぁー……、なんて、そんな事はどうでもいいんだ。
大事なのは、昨日が俺の誕生日だったという事──つまり、昨日が"特別な記念日"だったという事である。
そう、昨日は、大切な恋人との約束を実行する日であった。
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