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ネガン先帝陛下…ネフィリム陛下の父君の世代、大体70年程前…様々な魔術が開発される事となる先駆けが発見された。
そして数年前、当時ネフィリム第三王子は特出した魔力を武器に魔術研究を開始。先帝陛下を弑奉り、実験材料にする事で様々な魔術が生まれる事となった。
そのネフィリム第三王子が即位した今も魔術研究の勢い変わらず、様々な研究者の手により今日も新魔術が湧水のように生みだされている。現帝陛下は先帝陛下の時と変わらず、ソレに惜しみない支援をしているのだ。
私の貰い手、ルーテンフォルゲン卿は先帝陛下の時代から恩恵を受けていた辺境貴族の一人である。彼…義父様は詠唱系の魔術を研究していた。
魔術は大まかに詠唱系と陣系の二つがあり、それぞれに短所長所がある。詠唱系は声を封じられたら術は紡げないし、陣系は描く場所と時間が確保出来なければ意味がない(書くモノは自分の血で大丈夫だろう)。
逆を言えば詠唱系は鼻歌のように何時でも紡げるし、陣系は沈黙したまま、どんな状況下でも書くものがあれば術を生み出せるという長所を持つ。
(実を言えば、高位魔術になればなる程どちらも使うので、或る程度熟練すると自然と両方取得してしまったりする)。
使うのは自分の好みにあったものをと言われている……が、実験体の私はそうは言ってられない。私はコレで成果を上げ、結果を出さねばならない。
そう、成果を上げて…
「………」
もしかしたら、案外そういう奴は沢山居るのかもしれない。完成体第一号…プロトタイプがいるというのは無いだろうけれど、成果を上げねばと思っている奴は。
「い…っ」
指を切った所が痛い。
「おいお前」
不意に肩を叩かれて、私は振り返った。そこには先刻私と相手をしていた魔術師が悪意を顔に含めて立っている。
一体なんだろうか。
「フェルト様がお呼びだ」
………奴が笑っている。
嫌な予感しかしなかった。
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