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──腕を引き抜いた。
次に噴き出してきたのは、赤く、温かい液体。
腕が貫いていたのは、兵隊の身体だった──
兵隊はそのまま地面へ崩れ落ちる。胸にポッカリと大きな穴を開け、そこからは血が溢れ出す。
銀色の髪を靡かせる青年は、それを見下ろしながら不気味な笑みを浮かべていた。そして、腕に付いた血を長い舌で舐める。
荒廃したロサンゼルスに立ち込める黒煙。鳴り響く銃声、人々の断末魔の叫び。
道端に転がる死肉を漁る烏の群れ、漂う腐敗臭、火薬の臭いが鼻を狂わす。
青年はくるりと振り返ると、ボロボロに壊れた車の影で、肩を震わす少年に優しく微笑みながら手を差し伸べる。
「大丈夫か? 餓鬼」
しかし、少年はその手を払いのけると、怯えた表情でこう叫ぶ。
「ば、化け物!!」
「え?」
遠方から轟音と共に建物の崩れる音が、地響きとなり伝わって来る。
二人の間に妙な空気が流れ、静寂がその場を包む。
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