Aged rabbit

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 「ムーチャンエサダヨー、オイデ」  今日も御主人様のお出ましか。まーた今日もニコニコしてるなぁ。うむ、美味い。しかし今日はチョコ無いのかね?ん?  文句の一つも付けてやりたい処だが、喋れないのが悔しいなぁ。とは言え僕は賢い。御主人様の言っている事だって結構理解出来るんだ。  おっと忘れて居たが、我が家の家族構成を紹介しよう。まずは僕、おしゃれで賢い淑女兎、ムーチャンと呼ばれている。次に御主人様、ガラスのケースに閉じ込められて居る所を連れ帰って貰ってからの腐れ縁で、もう十年にはなるかな。彼女は人間のくせにリアクションが大きく感情が分かりやすい。そんな彼女が好きだった。何故って?僕が美味しそうに餌を食べればニコニコして、僕が体調を崩した時は、慌てたり悲しんだり。そんなに分かり易い愛情表現をしてくれる相手を嫌いになるとでも思うかい?  まぁチョコをくれるからという理由もあるけどね。  そんな分かりやすい御主人様と賢い僕、彼女の環境が変わった時でも、何時でも、ガラス越しに出会ったあの日からずっと一緒だった。寒い時には一緒に寝て、暖かい時にはわざわざ芝生のある公園まで一緒にお散歩。僕は幸せだった。言葉にして伝えられないのがやっぱり悔しいや。  とは言え、話し好きの御主人様、たまにしつこく訳の分からない話しするのには呆れたものさ、テレビや政治の話し?僕そんなに複雑な人の言葉分からないってば。そんな時は何時も思ったものさ、餌を早く寄越せ!ってね。  とは言え何時も後からチョコをくれたり抱っこしてくれたり。まぁしょうがない奴だなウチの御主人様は、許してやるか。という具合さ。  御主人様の周りの人達も皆僕に優しくて、御主人様も優しくて、僕は一つ歳を取る度に人間そのものが大好きに為って行った。
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