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そんな私も、もう十歳も越え、身体の彼方此方にガタが来ているなぁと感じ先はそんなに長くは無いかもしれないなと考えて居た矢先の話しだ。
突如として強烈な腹痛が襲った。息をするのも苦しい程である。どうしようもなく横に倒れ息をフーフーとして居た。そこに出掛ける支度をしていた御主人様が通りかかる。
「ムーチャン?ドーシタノ!」
持って居る荷物を投げ捨てて慌てて駆け寄って来た御主人様、僕に毛布を掛けて撫でてくれる。そして変な機械と会話を始める。
「ムーチャンガ、ムーチャンガ×××」
狂った様に僕の名前を連呼する御主人様、心配してくれて居るんだね。でも会話の中で聞き取れた数少ない単語、モウトシガトシダカラ、タイリョクガモタナイ、コンヤガ、アキラメナイ、ドウスレバイイ。
やっぱりそうか、まだまだ御主人様と一緒に居たいけど、もうそんな時期なのかもしれないなと、僕は悟った。
変な機械を床に置き御主人様は僕の方を向き直して言った。
「アキラメナイ、ワタシガツイテイル。」
御主人様の目からは水が滴り落ちて居た。僕は知っている悲しいのサインだ。
その晩、御主人様は一時も僕の傍から離れず、ガンバレ、ワタシガツイテイルと、しつこい程に声を掛け、撫でてくれた。
僕は何時の間にか少しだけでいいから時間が欲しいと願うようになって居た。
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