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『おいおい…、そんな湿気ていても何も変わらんぞ。』
軽快な音を立てて視界をワイングラスが塞ぐ。
頭上から降ってきたやけに澄んだ声に僕は気怠げに顔を上げると
グラスの向こう…つまりカウンターの向こうの赤い瞳に自分が映っていた。
湿気た顔…。
瞳の中の僕は、
まるで赤い海に溺れたようで
溜め息をまた漏らした。
『あのな…、人の顔を眺めるまでは俺だって我慢できるが…その面は何とかならんのか?』
今度は頭上ではなく目の前の赤い瞳から漏れ出ている感覚。
いや、瞳じゃない…赤い瞳の吸血鬼から…だ。
少し苛立ったように方眉を上げているがアイスピックを振るう手は休めない。
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