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プロローグ
かつて、この域に華やかで美しい都市があった。
ザフムルグの真珠―タブナジア候国
今をさかのぼること数十年。
クォン大陸の西方辺境を治めるタブナジア候国は、海運による経済力を背景に、侯爵アルテドールのもとで、繁栄の絶頂を迎えていた。
その華やかな街並みから「ザフムルグの真珠」と形容される候都には、多くの商船が出入りし、街路は世界各地から集まる商品で溢れていた。
民は侯爵を信頼し、侯爵は優れた政治手腕でそれに応えていた。
誰もが、さらなる国家の発展と繁栄を疑わなかった。
「闇の王」率いる獣人軍の一斉蜂起が起こり、やがてヴァナ・ディール全土を巻き込む戦いに発展しても、人々は絶望することなく、戦火の中で力強く生きていた。
戦いの日々も、いつかは終わる。
たとえ失うものがあっても、希望だけは決して無くすものか――。
誇り高きタブナジアの民は、そう思っていたのかもしれない。
しかし、戦いの終わりは予想もしない形で訪れた。
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