49人が本棚に入れています
本棚に追加
中間テストも終わり、あの光景も目立たなくなってきた頃。
神野さんが学校を休んだ。
神野さんのおじいさんから電話があって、風邪をひいたとの連絡があったらしい。
僕がそれを知ったのは帰りのHRでのこと。もちろんいない事は分かっていたが、特に神野さんと親しいわけじゃない僕が理由を知る由もない。
男の子を寄せ付けないあの神野さんを病気にさせるとは、粘着質なウィルスだな。新型インフルエンザかな。……な~んてね。
「男をまったく寄せ付けない神野が風邪ひくなんて、新型インフルエンザだな」
一瞬ドキッとしたが平静を装いつつ、後ろを振り返り声の主に言い返す。
「失礼だな、神野さんだって風邪くらいひくさ」
「そうか、でもアキラこそそう思ってたんじゃないか?」
ニヤリとした笑顔で眼鏡の奥の瞳が僕を捉える。
完全に見透かされた感覚に陥り、返す言葉もなく僕は力なく笑った。
「さすがに小学校からの付き合いなだけはあるね、東山」
「アキラの考えそうな事を言っただけだがな」
最初のコメントを投稿しよう!