出会いと交錯 1

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年老いた鶏の顔面に人間の皮をぴったりと窮屈なまでに貼り付ければ、あるいはこんな顔にもなるのだろう。 この年老いた鶏男こそ、アルデバラン・トレード株式会社の創始者であり、絶体無二の雄鶏ウィーバー・コットンである。 ウィーバーは自らのビジネスの成功により、彼を崇拝する数多くのクソったれたちや虫けらたちにこう呼ばれた。「ウィーバー《ゴッド》コットン」「ガットン」 そして今日、ガットンはこめかみに青筋を立てながらこちらに向かって何やら叫んでいる。興奮して初めは紅潮していた顔が徐々に赤黒くなっていき、この数秒で蒼白に変わっていった。 今日ガットンがそこまで怒りに奮えるには訳があった。珍しく。 5年前にウィーバーと会社幹部たち(先に挙げた「クソったれ」、「虫けら」は主にこの連中を指す)が立ち上げたプロジェクトがあった。会社の命運を左右する一大プロジェクトで、当時社内の人間全員が休みなしで朝から晩まで働き続けた。ウィーバーを除いて。 その甲斐あってプロジェクト発足からたった4年でアルデバラン・トレード株式会社は世界中の港に基地をもつ超巨大貿易会社となったのだ。 その意味では先のクソったれや虫けらの敏腕ぶりは評価せざるを得ない。それほどの腕の持ち主がなぜ今もウィーバーのような鶏男に媚びを売り続けているのか、理解に苦しむ他ない。 ウィーバーがその鶏顔をより一層鶏の顔面に似せながら、こちらに向かって怒気を露にし唾を飛ばしはじめてから既に数分が過ぎようとしている。
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