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メールで教えられた車がやって来るのを、駐車場の入り口を眺め待った。
(あっあれかな?)
それらしき車がこちらに向かって来て、運転する女性と目が合うと女性は薄く微笑んだ。
(ミレイだ!)
ミレイは車をスッと駐車場に停めると、小ぶりなバックを一つ持ち、車に乗り込んできた。
「おはよう。お待たせ」
「そんな待ってないよ。おはよう。」
一瞬視線が絡まり、けれど、すぐにそらして、お互いふっと笑った。
「長い間やり取りしてると、初めて会った気がしないけど、やっぱり緊張するわね。」
「うん。見てこの手。なんか震えてるし。」
僕は手を目の前にかざした。
プルプルと小刻みに震える手に目線を向けられ、余計に震える。
「実は私も緊張して、指先が冷たいままなの。」
かざした手は、指先に向けてロウのように白くなっていた。
お互いハハッと困ったように笑う。
「で。あんま時間無いんだよね?」
「うん。12時30分には〇〇に着かなくちゃいけないから、12時過ぎには車に戻らなきゃ。ごめんね。バタバタして。」
「正味1時間ってとこか・・・じゃ色気も無いけど、真っ直ぐホテルって事でいい?」
「いいわよ。」
僕は車を発進させた。
目星をつけていた、一番近いホテルに向かって。
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