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俺がたどり着いた町は嫌な町だった。
ヨーロッパ系統のレンガ家が建ち並ぶ。
ここは高貴な者が多いのかどれも立派なものだった。
いや説明が不適切だな。
ここは高貴な者のみが家を持てる町だ。
外観も優雅で富に溢れているが、一歩裏通りへ入ればそこは異臭の町
人間の腐った臭いだった
生きているか死んでいるか解らない。
ぐったりとした人間が町のゴミのように転がり捨てられていた
殆どが子供
薄汚れた麻布を巻いて、動かない
生死確認できる者は、泣きわめく生まれたばかりの子供くらいで、あとは腐っているかそうでないかの違いで判断するしかない
ストリートチルドレンと称するにはあまりにも残酷な現象だった
俺はその町の状態を横目に紙袋にこれでもかというほど食料を詰め込んで、町外れへと足を運ぶ
町外れの丘にそびえ立っているのは教会だった。
「教会」といっても、廃墟となったもので、
入口は崩され中が多少見える。天辺に付いた十字架のみが教会だったと、主張していた
風よけにはなるのか、中へ入ればここにも、町にいる者よりは生気の感じられるストリートチルドレンが身を寄せ合っている。
黒いジャケットにイージーパンツ。
若干の癖っ毛、細身ではあるが、適度な筋肉。
この町には不釣り合いな俺の姿を今まで見たことが無いのか、子供達は少しの好奇心と結構な恐怖で、
俺を遠くからただじっと見つめる。
「お帰り、フラック」
40代くらいの男の声が俺の名を呼んだ。
教会なのだから、神父と考えるのが妥当だが
見当たらない
俺は声のする方に目を向けた。
「ホラ、買ってきてやってぜ」
両手に抱えた紙袋をちょいっと持ち上げ、中身を見る。
「できるだけ大きめなパンに…果物、肉は…ちゃんと焼いてある」
「あぁ、ありがとう。子供達にあげてくれませんか。」
男に言われた俺は…ホラよ。と乱暴に紙袋を投げる
食糧の匂いによってかき立てられた食欲に負けた子供達が恐怖心を捨て、紙袋に近寄った。
俺は子供達に目もくれず座れそうな長机に軽々と飛び乗る。
「あんたはいいのか?結構旨そうだぜ?」
俺が冗談っぽく聞くと、男も笑いながら答えた
「御冗談を。今の私の姿でパンを食べられるのなら奇跡ですよ」
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