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しばらくして、
ようやく意識がはっきりとしてきた。
さっきまでは気付かなかったがどうやらここはどこかの高級ホテルの一室らしい。
備え付けてある家具なども一級品ばかりだ。
窓の外は、もう夜のようだ。真っ暗で何も見えない。
これ以上の沈黙は辛いと考えた私は、早速、事のいきさつを二人に聞くことにした。
「ね、ねぇ!どうして私なんか誘拐したのよ?!」
「はぁ?誘拐だとー!?お前やっぱり頭おかしいんじゃねーの?だいたいお前はなぁー…」
「まぁまぁ蓮様落ち着いて下さい。みさと様も。私達は貴方を誘拐したのではなく、お話があってこちらにお連れしたのです」
「私に話?そういえば此処はどこ?あなた達は誰なの?」
「これは申し遅れました。私はユーリと申します。私達はあるマフィアの一員でこちらはそのファミリーのボスの右腕にあたる蓮様です。」
「そしてここは俺達のアジトだったところだ…」
そう呟いた蓮の瞳は、なぜか真っ直ぐに私をとらえていて、とても悲しそうだった。
『……』
しばらく部屋には何とも言えない空気が漂っていた。
「……。だったって事は今は違うの?何があったの?」
長い沈黙から出た答えがこれだった。聞きたいことはいっぱいあったはずなのに、蓮の瞳を見ていたら、なぜか言葉がそれしか出て来なかったのだ。
もしかしたら薄々分かっていたのかもしれない。
その答えは私のこれまでの生活を…
いや人生すらを大きく変えてしまう内容である事だという事に…。
それでも知りたかったのだ。
それが私の忘れてしまった……
ううん。失われた記憶だと確信していたから……
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