第三章 頭でわかっていても

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 ところが、銃声は鳴り響かなかった。静寂だけが満ちていく。  エミリーは信じられないモノを見た。 「……嘘。……全部爆発したはず……」  銃口に一本の針が刺さっている。針電。レグルが生み出した雷の針。  さっきのぶつかり合いにより、全て爆発したものだと思っていた。  なのに、今、目の前にある。  愛銃の先端に突き刺さっている。それが意味するものは一つ。 「――――ッ!」  行き場を失った魔力が暴発した。ただでさえ、キャパシティーを越える魔力を込めていたのだ。  比喩出来ないほどの音を響かせながら、銃が爆発した。  咄嗟の判断で明後日の方向に投げたが、爆風は容赦なくエミリーを吹き飛ばした。  地形を変えてしまうぐらいの威力をその身に浴びて、エミリーは傷だらけだった。 「痛いよォ」  地面に擦られたことで身体中砂だらけで、傷も多々ある。  特に足が酷い。どこかに刺したのか、ドクドクと血が流れている。  涙が出そうになる。  結局、勝てはしないのだ。レグルが強い。自分は『落ちこぼれ』。  レグルが悠々と眼前に着地した。おそらく爆風を避けるために、今まで跳躍していたのだろう。 「さて、君に引導を渡してあげよう。武器もなくなり、動けなくなった身体。君の敗北だ」  言い返しはしない。  彼の言う通りだから。  私はレグルに負けたのだから。最後の最後で、詰めを誤ったのだから。  だから、 「なるべく痛く打ってあげようか、な!!」  振り下ろされた剣を呆然と眺めた。
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