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翌朝。男子第五分寮の一室にアベルはいた。
小鳥の囀りが聞こえるなか、アベルは着慣れない制服を身に纏い、自室に備え付けられている洗面台の前に立つ。
鏡に映る自分の黒髪と黒い瞳。
今は五月であるため、制服は白いワイシャツである。
白と黒が似合ってるなと自分自身のことながらそう思った。
アベルは水で顔を洗い、学校指定の鞄を手に取る。
「行ってきます」
返事は帰ってこない。
それを知りながらも、アベルはひどく淋しい気持ちに襲われた。
「君がアベル君か。私は君の担任である、カルナード・アルバートだ。よろしく」
職員室を訪れると、気さくの良い中年の男性がアベルを待っていた。
肥満体系だが、顔付きは良い部類だろう。肩口まで伸びている金髪を揺らしながら、自己紹介され握手を求められる。
ぎこちなく握手を交わし、アベルはよろしくお願いしますと言った。
「しかし、こんな中途半端な時期に編入とは大変だな」
アベルが編入するクラス、一年C組の教室に向かう途中、カルナードが苦笑しながら言った。
「すみません」
反射的に謝ってしまったアベルの頭に、カルナード手の平を載せる。
「何を謝ってるんだ? 別に君を責めたわけじゃないぞ。逆に私が謝らなくてはな。初日から腕輪を持つような生徒を昨日相手してやれなくて」
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