第一章 腕輪《アクセス》

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 強者の証。アベルが手にするのに相応しい証。  しかし、アベルは舞踏会に出る必要性があるとは思えなかった。  称号や名声は自国で手に入れた。学校の武芸大会などに出て称号を得ても、それはギルドで培ってきた称号に比べれば無価値に等しい。 「そんな顔をしないでくれたまえ。腕輪は確かに強者の証だが、ほかにも色々と効果があるんだ。例えば、発言権の強化。教師陣も“腕輪所有者(レディウス)”の発言を無視することはできなくなるんだよ。なにせ、最上級生の腕輪所有者は教師陣の力を凌駕してる者もいるからね」 「最上級生って、三年生でしたよね?」 「そう、三年生だよ。ちなみに僕も三年生だから。まぁ、そんなことはどうでもよくて、残り一つが君にとって重要かもね」 「重要?」  アベルは怪訝な顔を浮かべる。  シセルは生徒会室の自身の机から一枚の紙を取り出した。テーブルの上を滑らせて、アベルに渡した。 「それを見たまえ。一年生の腕輪所有者のリストだ」  手にとって眺めてみると、二十一人の名前が縦一列均等に並んでいる。  一番下には、アベルが護るべき対象者である皇女殿下もいた。  思わず眉を寄せたアベルに、シセルが楽しそうに言った。 「気づいたかね? そう、彼女も腕輪所有者だ。そこに意味があるんだよ」
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