第三章 頭でわかっていても

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「ふん、ようやく倒れたか。雑魚のくせに手間取らせてくれたね」  厭らしく破顔するレグルが、剣を高々と振り上げた。 「これで私の勝ちだ。観客の目があるからここでは何もしない。が、これが終わったら覚悟するがいい。私に傷をつけたことを必ず後悔させる」  勝ちを確信しているレグルとは打って変わって、エミリーは負けたと思っていない。  いや、この時こそ唯一のチャンス。勝ちを得るための突破口。  エミリーは右手に持った銃を、至近距離にいるレグルに向けた。  銃口から魔力が漏れる。それは、銃が内容できる魔力のキャパシティーを越えたためである。  これに賭けたエミリーの一撃。彼女が慕う師匠から受け継いだ技。  紅蓮双羽銃技、灼煉牙。  銃身が赤みを帯びる。技を放つための前段階。この赤みは、血の色を連想させる。 「な――ッ!」  予想だにしてなかったに違いない。レグルは驚愕の表情を浮かべ、急いで剣を振り下ろそうとする。  だが、間に合わない。  最早銃口からは、ちらちらと炎が噴出している。  真っ赤に染め上げられた愛銃に、さらなる魔力を込める。  そして、エミリーは暴発寸前の銃の引き金を躊躇うことなく引いた。
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