第一章 腕輪《アクセス》

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「舞踏会って、腕輪所有者が一番を競うためのものじゃないんですか?」 「それが一番の目的だよ。でも、舞踏会には各国の軍関係者、ギルドの重鎮が見に来る。彼らが来る理由は、有能な新人を獲得するためだ」 「舞踏会で勝てば、将来も安定してくるわけですね」 「その通りだよ。舞踏会は毎年十二月の最初の一週間で行われる。各学年の最強の選手が戦いによって決められ、そこから学校最強選手を決めるんだ」  シセルはさらに紙をもう一枚、アベルに渡した。  見ると、そこには見たことのある顔があった。クォールズ一族特有の赤みがかった髪をした男。 「……この人は……」 「君も見たことがあるだろ? 彼は去年の舞踏会で学校最強になり、ギルドからスカウトされた。そして、破格の待遇でギルドに入ったんだよ」 「強かったですよ。魔法も、剣術も」 「しかし、君は勝ったんだろう?」 「…………」 「そう猜疑心まみれの視線をぶつけないでくれたまえ。情報を仕入れるのが僕の唯一の取り柄なんだから」 「勝ちましたよ。ただの一撃も喰らわずにね」 「そんな君が舞踏会に勝つのは容易なことだろうね」  紙を返し、アベルはジッとシセルを凝視した。何を考えているのか、解らない。  こんな人間、初めて見た。 「君の活躍、楽しみにしてるよ」
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