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「舞踏会って、腕輪所有者が一番を競うためのものじゃないんですか?」
「それが一番の目的だよ。でも、舞踏会には各国の軍関係者、ギルドの重鎮が見に来る。彼らが来る理由は、有能な新人を獲得するためだ」
「舞踏会で勝てば、将来も安定してくるわけですね」
「その通りだよ。舞踏会は毎年十二月の最初の一週間で行われる。各学年の最強の選手が戦いによって決められ、そこから学校最強選手を決めるんだ」
シセルはさらに紙をもう一枚、アベルに渡した。
見ると、そこには見たことのある顔があった。クォールズ一族特有の赤みがかった髪をした男。
「……この人は……」
「君も見たことがあるだろ? 彼は去年の舞踏会で学校最強になり、ギルドからスカウトされた。そして、破格の待遇でギルドに入ったんだよ」
「強かったですよ。魔法も、剣術も」
「しかし、君は勝ったんだろう?」
「…………」
「そう猜疑心まみれの視線をぶつけないでくれたまえ。情報を仕入れるのが僕の唯一の取り柄なんだから」
「勝ちましたよ。ただの一撃も喰らわずにね」
「そんな君が舞踏会に勝つのは容易なことだろうね」
紙を返し、アベルはジッとシセルを凝視した。何を考えているのか、解らない。
こんな人間、初めて見た。
「君の活躍、楽しみにしてるよ」
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