46134人が本棚に入れています
本棚に追加
/382ページ
「悲惨てどういうことだよォ? 俺がルージュ先輩に手を出すとでも思ってんのかァ?」
口を尖らしたダイドに、アベルは苦笑した。
「そっか、ダイドはルージュ先輩に手を出す気なんだね?」
「ばっ!? んなことするわけねぇだろォ! お前さん、俺の話聞いてたのかッ?」
妙に慌てるダイド。
かまをかけただけなのに、それがかえって怪しい。
鈍感大魔王と言われた怨みを返そうと、さらにアベルは追求することにした。
「あれ? どうしてそんなに慌ててるの?」
「慌ててなんかいねぇよ! お前さんが意味わかんねぇこというからだろうが!」
「いつもは声を荒げたりしないよね?」
「俺だって声を荒げる時だってあんだよ。悪いか」
やけっぱちな言い方にアベルはだいぶ気を良くした。
いつもユンフェミアとダイドからからかわれるだけなのだが、自分がからかう側に回るとそれが楽しくなる。
故郷にいた時は気づかなかった楽しさだ。セシリアをからかっても軽くあしらわれ、文学校では友達がいなかったから、からかわれたりすることもなかった。
「なんで声を荒げたの?」
また繰り返される質問にイラッとしたのか、ダイドの顔が引き攣った。 追い撃ちをかけようとしたアベルが口を開こうとした時、コンコンとノックが鳴った。
最初のコメントを投稿しよう!