46131人が本棚に入れています
本棚に追加
/382ページ
「君に“腕輪”を授けよう。ありがたく受け取り給え」
アベルは列車による長い旅を終え、無事にガレーディア公国の首都リザリアに辿り着いた。
五月中旬という中途半端な時期の転入のため、先ず学校に挨拶にいかなくてはならない。
そう考え、アベルは一直線に学校に向かうことに。ギルドからの支給品である地図を片手に、見慣れぬ街を歩くこと数十分。
アベルの眼前にとてつもない規模の建物が見えた。
街外れの緩やかな丘に建つその姿は、まさに圧巻の一言。複数の建物が建ち並び、それら一つ一つが影響しあっていて、外観の同調も施されていた。
半ば圧倒されながらもアベルは敷地内に入る。今日は平日。校舎内は騒がしい。
職員室に行こうとしたが、場所が解らないためその場所を聞こうと、ある男子生徒を捕まえた。
その男子生徒に転入生だと伝えると、ほとんど強制的に生徒会室に連れ込まれることに。
そして、先程の言葉である。
「腕輪……ですか?」
男子生徒が何が言いたいのか、アベルには理解不能だった。いきなり腕輪を授けようと言われても、反応の仕方に困るというものだ。
「あれ、あまり嬉しそうではなさそうだね」
後頭部で一本に纏められた長い黒髪に、知性を伺わせる黒い瞳に眼鏡。
――この人は、何者なんだろう?
最初のコメントを投稿しよう!