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「ん? ……ああ、そうか。君はルーゼル王国から来たんだったね。それなら、手袋のことを知らなくても仕方ないか」
「あの……あなたは誰なんですか?」
「あれ、まだ名乗ってなかったかな? 僕は、シセル・フォーデ・ハイゼア。ガレーディア公国に一つしかない“武芸学校”の生徒会長だよ」
武芸学校とは名前の通り、武芸を育成する学校のことである。魔法が復活して、約百年。最先端のガレーディアでしか武芸学校は開かれていない。
つまり、各国から武芸を学びたい生徒が集まるのだ。そのため校舎も大規模なものにし、生徒の統一性を計るために全寮制となっている。
そんな大規模な学校の生徒会長となると絶大な権力を持っている筈だ。
「生徒会長……ですか?」
「ああ、話は聞いてるよ。君は、今学期から編入したコウゼス帝国の皇女殿下の護衛なんだろう?」
「どうしてそれを!? 極秘のはずです!」
あっけらかんと言い放ったシセルに対して、アベルは思わず声を荒げた。
皇女殿下護衛任務。
その名の通り、大陸の南に位置するコウゼス帝国の皇女様を護衛する任務。アベルはこれをギルドの長から命じられた。
そしてこれは一部の人間しか知らない極秘任務だ。生徒会長といえど、それが彼の耳に届くとは思えない。
「そう興奮したら、身体に良くないね。理由は至極簡単なものさ。僕のお祖父さんが、この学校の理事長なんだよ」
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