第二章 静かな夜に響く声

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 そんな記事の一文を読んだ時、アベルに衝撃が走った。  そうか、僕はもう化け物なんだ。  小さい頃から、強くなれと耳にタコができてしまうぐらい言われてきたのに、強すぎると化け物になってしまう。  人間として見てくれない。  解っていたことだ。  強すぎる者の宿命。弱き者が下す残酷な境界線。 「……化け物、か」  もう一度呟いてみる。  心の底に冷たく響く。  言葉は闇に溶け、月へと昇っていく。すーっと夜空へ消えていく。 「……化け物、か」  三つの文字、四つの音。  それが目と耳にこびりつき、アベルを夢の世界に誘わなかった。  夜がいつもより長く感じられ、こんなにも静かなのだとしみじみ感じた。
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