猫の王

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彼の住んでいるアパートは、 とても静かな住宅街の一角にあった。 「部屋は凄く散らかっているんだけど、 ゆっくりしていって下さい」 そう言って彼は玄関のドアを開けた。 部屋を覗き込んだ瞬間、 私は息をのんだ。 部屋中に無数の猫がいた。 何百匹という単位だった。 足の踏み場もない。 「狭いけど、どうぞ」 そう言って彼が部屋に入ると、 数十匹の猫が彼の足にまとわりついてきた。 「・・・凄いね、何匹いるの?・・・」 「さあ?」 「・・・これ、みんな飼ってるの?・・・」 「まあ、飼っているというか、一緒に住んでるんです」 彼は、そう言いながら、 無数の猫達の中に寝転がるようにして、 ゴロゴロと転がった。 すると猫達も、 彼の周りで腹を出してゴロゴロと転がり始めた。 彼は転がりながら、私に言った。 「僕、赤ん坊の頃に人間に捨てられたんです。 それで、野良猫に拾われて育てられた」 私は言葉が出なかった。 「僕の最初の母親は、グンヤグルという名前のトラ猫でした。 彼女はまだ僕が幼い頃に死んでしまいました。 猫は人間より寿命が短いでしょ。 それで、 猫達は何代にも渡って引き継いで僕を育ててくれました。 ですからこの猫達は、 僕の本当の家族です。 僕は彼らから、ウニャルウと呼ばれています」 そう言って彼は、ニタッと笑った。
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