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診療所の朝は、できればあまり関わりあいたくないペットとの交流から始まる。
秋月蘇芳は白衣、帽子にマスクの完全武装で地下三階に降り立った。
『関係者以外の立ち入りを禁ず』と言う張り紙の脇には、カーナビを一回り小さくした程度のスキャナーと、一から九までの数字が並んだボタンがある。
滑るように指先を動かし、スキャナーに視線を移す。
パスワードと、網膜認証システム。個人医院には過ぎたるセキュリティだ。
ピッと言う電子音とともに、自動ドアをくぐると、核シェルターを連想するような分厚い扉がもう一枚待ち構えている。
ごぅん、と唸るような音がして、消毒液のミストが吹いた。
この前室で全身消毒液してからでないと次の部屋には入れないし、ましてや出ることなど許されない。
そういう決まりなのだ。
面倒臭そうに手袋を嵌めようとした彼が、腕時計を外しわすれていたことに気付き慌てて外したとき、文字盤は丁度午前7時を指していた。
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