カルテ1-1

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彼は焦っていた。時々ちらちらと壁に張り付いている時計を睨みつつ。 しかしどんなに睨み付けようとも、時間は彼の都合などお構い無しである。 (ちくしょ~、終わらないっ!) 今日は平日。勿論夏休みでも冬休みでもない。 それでもって彼は高校生。 まさに危機的状況であった。 そんな彼の焦燥を虚仮にするかのように、 「ぴんぽんぱんぽ~ん」 壁のスピーカーが、気の抜けたメロディを響かせた。 「やっほー、蘇芳く~ん🎵」 暢気な声である。 「おはよ~。どう?俺のエボリーヌ達は元気に育ってるかい?」 ふぁ、とスピーカーから気だるい欠伸の音が漏れる。 それが、ますます蘇芳の神経を逆撫でした。 「立派に増殖しとるわ!飼育係が優秀だからな。気になるなら、とっとと俺と交代しやがれ!」 「御無体な。昨夜川上さんが切迫流産しかかったもんだから、何だかんだで寝たの明け方だもん」 「知っとるわ!昨日人が気持ち良く寝てるとこを叩き起こして、容赦なくこき使ったのはどこのどいつだっ!」 ちっ、と言う呟きを、お利口さんなスピーカーがしっかり拾った。 「ちっ、じゃないだろ!川上さんの容態が落ち着いたとたん『俺もう限界~っ』とか言って、さっさと寝た癖に」 残された蘇芳は一人寂しく後片付けをしたのである。
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