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歳はそうだな……30代くらいだろうか。顔はハッキリ見えない。灰色のスーツを着て、壊れたゼンマイ人形のように、彼はただひたすら向かいの壁に向かって頭を下げていた。
怖い、と思うより先に、ビックリした。
大声でも出せば隣で寝ている母が起きたのだろうが、ビックリして声すら出ない。何より、母を起こした時の方が私にはよっぽど怖い。
よって、
そのまま寝ることにした。
放っておいても害は無さそうだし(嫌なヤツは気配で分かる――と、後々の経験で理解した。その当時は本当に直感だ)、目覚まし時計が鳴れば学校へ行く支度をしなければならない。幽霊よりも睡眠が大事だ。
……と言うわけで、私は布団に入り直し、夢の世界へと再び旅立った。
ところがこの現象、1日では終わらなかった。
翌日、私はまたいきなり意識が浮上した。
目覚まし時計が鳴ったわけでも、外が騒々しかったわけでもなく、まるで水底から引き上げられるかのように唐突に、目が覚めたのだ。
室内は、家具が見えるくらいにはほの明るく、「あぁ、まだ早い時間なんだ」と私はぼんやりした頭で思った。
……なにやらデジャヴ?
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