忘れないで

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 さて、アレは祖父の四十九日が過ぎた頃だったろうか……正確な頃は忘れた。だが、少なくとも月命日は過ぎていたように記憶している。  家族に、些細な不幸が続いた。  それは例えば小さな怪我を負ったとか、何もない所で転んだとか、お金が足りないとか(それはいつものことか)、そんな、本当に些細な不幸だ。  普段なら「あぁ、なんかついてない……」で終わる話なのだが、祖父が他界したばかりだと言うのが気にかかった。  それに加え、父は末息子と言うこともあり祖父から可愛がられていた。  父に生き写しの私もまた、祖父から可愛がられていた。 「仏壇無いからおじいちゃん拗ねてるんじゃないの?」  だから、そう母が言い出した時、誰も「そんなまさか」と笑うことは出来なかった。  だが、何度も言うが、我が家には仏間どころか仏壇を飾るスペースすらないのだ。加えて、遺影もはるか離れた父の実家にある。  父も母も、むろん私も頭を悩ませた。  そして出た妥協案が、家の中で一番高い位置にある食器棚の上に、簡易的な仏壇を作ろう……と言うものだった。  遺影の代わりに、生前撮った唯一祖父が写っている写真を飾り、お線香の代わりにお香を置いた。
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