忘れないで

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 すると翌日からそれまで続いていた現象がピタリと止み、普段と変わりない日々が戻ってきたのだ。  もちろん、眉唾物なのは重々承知している。だが、敬愛する祖父を祀りたかった気持ちは皆あった。だから、きっかけを作ってくれたのではないか、と思いたいじゃないか。と言うか私はそう思っている。  追記と言ってはなんだが、もう1つ、簡易的な仏壇を作ってから今現在まで、私にある『変化』が生じるようになった。  始めは何だったか忘れたが、ある日私は突然、水まんじゅうが食べたくなった。  水まんじゅうを知らない方に解説しよう。水まんじゅうとは、葛餅の中に餡が入った、納涼菓子だ。  寝ても覚めても水まんじゅう。  授業中も水まんじゅう。  風呂に入っても水まんじゅう。  頭の中はもう水まんじゅう一色だ。  確かに、私は和菓子が大好きだ。それは認める。だがしかし、こんなに1つの和菓子に取り憑かれたのは初めてだった。だから、今でも良く覚えている。  とにかく水まんじゅうが食べたい。水まんじゅう寄越せ。  もはや頭には水まんじゅうのことしかなく、私は近隣の和菓子屋コンビニ至るところを探しに探した。
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