守護者のいる家

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 私は、母の実家にひとりで泊まったことがない。泊まるときは、必ず兄か母が一緒だ。  実を言うと、母方の実家にはある逸話が存在する。知らされたのはつい最近だが、なかなかに信憑性のある興味深い話だった。  私の祖父にあたる人は、七人兄弟の末っ子だ。姉がふたりいるらしいが、私には交流がないので分からない。  この祖父の兄たち、実は皆70歳を迎える前に癌で亡くなられている。  図ったように、70歳前だ。  死因が全員癌と言うのも驚きだが、ソレに加えて、どの家庭も、マトモに子供が育たなかった。  生まれつきの知的障害者。  若くして首吊り自殺。  四十路を過ぎてニート。  そう、まるで何かの呪いでもかけられているかのように、符合するところが多々ある。  その事実に戦慄したのは、当の祖父その人だ。  このままでは自分も70歳前に死ぬのではないか。  死ぬことを何より恐る祖父には、それはきっと許容できる範囲を越えていたのだろう。  そこで祖父は何をしたか。  力のある坊さんやら何やらに占じてもらい、風呂場の位置からトイレはもちろん、家中の部屋の配置を決めたらしい。  そのかいあってか、祖父の子供(つまり母や伯母)は特に奇怪な行動を行うことなく、みな真っ当に育ったのだと彼は信じているようだ。
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