プロローグ

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遠く、潮騒が聞こえてくる。 薄桃色の花が咲き乱れる草原を、海風が穏やかに渡っていく。 そのただ中に、空を切り取ったような青が見える。 それは、スカイブルーの衣に身を包んだ少女――。 美しい少女だった。 艶やかな髪が、微風になびき漆黒にきらめく。 白いうなじに光るのは銀鎖の首飾り。 獅子をかたどったシルバーの指輪が、鎖につながれて胸元に揺れる。 少女は待っていた。 ――誰を? そう彼女は問いかける。 ずいぶん長いあいだ、ここで待ちつづけているように思える。 あるいは刹那の時を。 時間は意味を持たない。 大切なのは、誰を待っているのか、思い出すこと……。
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