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大佐は何だか急に気持ち悪くなりました。
残酷だの鬼畜だの言われたことは数え切れませんが、彼は生まれて一度も優しいなど言われたことはありませでした。
こんな俺は俺じゃない。
体がムズムズしてきて、本当の自分は残酷なのだから、お前の笑顔なんか見たくないんだ、と言って彼女を痛めつけたくなりました。
ですがそんなことを今しては計画が台無しになります。
大佐は焦る気持ちをぐっとこらえました。
次の日もまた次の日も、大佐は少女に自分の分の食事を分け与え、シャワーを浴びさせ、夜は一緒になって寝ました。
やはりムラムラして、彼女を乱暴してしまおうかと考えることもなりましたが、そういう時はやはり、彼女を殺すその時のことを思いだして我慢し続けました。
何日も続けて大佐恒例のユダヤ人の虐殺が行われないことに、周りの部下の親衛隊達は不思議に思うようになりました。
いくらヒトラーに言われたからと言って、それを全くしなくなるような男ではないのですから。
収容所に来てから、彼にとって虐殺は息をするくらい当たり前のことだったのですから。
それに加えて朝昼晩、毎日
「部屋でくう」
と言って支給食を持って姿を消すので、何か部屋にかくまっているのではないかと疑い始めるものも出ました。
しかしそう言う者はたいてい
「なんだお前、大佐が人助け何てそんな事をする人間に見えるのか?」
という風に誰かが言うとすぐに
「確かに有り得ないな」
と納得してしまうのでした
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