プロローグ

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人間が、人間同士で社会をつくりあげて生きているように… 気ままな猫だって、社会をつくりあげて生きている。 そして、人間のように、有権者(猫)が(猫の)世界を治めている。 猫の世界の中で最も権力を持っているのが、猫合家。 なぜなら、猫合家には、たった1匹の娘がいるからだ。 名を、猫合美依子。 美衣子には、他の猫とは違う点がある。 それは…人間に化けることが出来る、化け猫だということ。 「お父様、お話とは、何でございましょう?」 「…美依子よ、お前もそろそろ成猫だ。お前を見込んで、頼み…いや、命令がある。」 「命令、とは?」 「人間に化けて、母の仇を打つのだ」 「…ッ!」 「お前の母親は、人間の車にひかれて、ぽっくり逝っちまった…この仇、とるべからず!」 「…はい、お父様。」 満月に照らされた夜、1匹の猫は1人の少女に変わった。 ただ、父に言われるがままに。 ただ独り、あの日の記憶に苛まれながら…。 ──満月が雲で陰った………。
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