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がたがたッと何かが崩れ落ちる音で目が醒めた。
泥棒か、それとも。
起き上がって辺りを見回すが原因だと思えるものはなかった。
少し黒ずんだ天井、開け放してある窓、好きな芸能人のポスターが貼ってある壁、元の台が見えないほどに物が乗っているちゃぶ台、中古で買った小さな冷蔵庫。
あとはもう自分が転がっているはずの、ベッドとして使っている三人掛けのソファ。
いつもと何ら変わらない部屋だ。
安堵の息を吐いて妙に固く冷たくなったソファを見ると腕だけ乗っている状態でいた。
眠りについた時には確かにソファの上にいたはずなのに、瞬間移動でもしたか、と思うはずもなく目覚めのきっかけとなった音は自分が落ちた時に鳴ったのだと気付いた。
そういえば身体が痛い。寝相が悪いのはいつものことだが。
視界に入った時計で時刻を確認すると、一時半を示している。
デジタルであっても今の時間は十三時ではないであろう、午前一時半。
「ああ、もうこんな時間か」
早く行かなければ、間に合わなくなってしまう。
今日は待ちに待った、あの黒川葉月が来るのだ。
折角のチャンスを黙って見過ごすわけがない。
彼女自慢の黒魔術、この目で視てみよう。
ちゃぶ台に置いてある、見覚えのあるようでない黒の物体を掴んでスーツのジャケットにしまう。
真っ黒なサングラスを掛けて、夜の闇へと消えて行く。
響く、遠ざかる足音は、そう。
全ての始まりの合図。
to be continued...
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