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夜色のマントを羽織った男が、闇に溶け込まずにくつくつと笑う。
白い白い顔に生きる者の血色は無く、それでも死者ではないと感じるのは、ただの直感だ。
黒、に塗りつぶされた世界。
ここは夢の中だと、気付いていた。
黒に墜ちた時『これは夢だ』と、そう思ったのだ。思いたかっただけなのか否かはわからないが、それは決して思い込みだけではないことを知っている。
他者よりも鋭くなってしまった六つ目の感覚がそう告げる。
現実味を欠いた夢であるのに、現実にあるような気がするのは間違いではないはずだ。
男の唇が動くが、音は発しない。闇は揺れずに静かなまま、だ。
何を言わんとしているかわかるのは、夢だからという理由だけではない。
唇を動かすことをやめた男が、またくつくつと嗤いながら闇に溶けていく。侵蝕されているわけではないのは、恐らくその男自身が闇であるから。
闇は闇に侵蝕されることはない。深く黒くなっていくだけ。
この夢から醒めれば、夢は、夢でなくなる。
この手の中にある硬いものは。
この、見えない目に視えるものは。
黒く深い、これは夢。
優しく冷たい、これは現実。
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