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すると、黒い石を手に取ったとたん、黒い球体がどろりと溶け始めた。びっくりした男は、女性の叫び声のような情けない声を上げて反射的に手を振り払おうととするが、へばりついて取れない。そして、溶けた黒い物体から卵から蛭のような大量の虫がうじゃうじゃと這い出てくる。更に驚いた男は尚も叫びながら手を強く振り続ける。卵から孵るように蠢きながら這い出てきた虫は、男の態度などまるでお構いなしにゆっくりと、しかし確実に体中へ広がる。
男は必死で振り払おうとするが、うまくいかない。それどころか、床や壁に擦り付けようとしても離れず、壁に叩きつけても潰れても赤黒いドロドロの液体を撒き散らしながらしつこく肌にばりつく。そうこうしているうちに虫は広がり続け、既に上半身も下半身も、当然生殖器や肛門も虫に覆われている。すべて諦めて尻餅をつく。
痛い。ふくらはぎから痛みを感じる。もはや抵抗する気もない男が視線を向けると、虫が男の体に穴を開け体内に侵入し始めている。虫の生暖かさを感じながら呆然と見つめているうちに、虫が鼻の穴や口内に侵入してきた。死んだ魚のような目で祠に向けるが、虫が眼球にまで到達すると遂に何も見えなくなった。また虫が何かをしているのか、強烈な眠気が男を襲う。「死ぬのか…」頭の中でそう呟いたところで意識が途切れた。
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