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「ライドレイ、ライドレイ! いるのならば返事をしろ」
じゃがれた、烏のようなだみ声がそう叫ぶ。少年は機関車のドアからホームを下り立った。
「おはようございます。キーゼ師匠」
少年がそう言って軽く頭を下げた先には、太陽のようにつるつるの頭の、痩せ細った老人が立っていた。
「点検は済んだか?」
キーゼと呼ばれた老人は自分の薄汚れた白いシャツを、あちこちつまみながら尋ねた。
眉間を筆頭に、顔中に乾いた大地の地割れのような深い皺が刻まれていて、彼の表情はよくわからない。
「ええ。少しばかり過水管が痛んでいるみたいです。あまり飛ばしすぎると危ないかもしれない」
ライドレイは鉄の塊を眺めていた時の高鳴りを、全て押さえているかのようにキーゼの老躯を見上げていた。
「そうか」
キーゼもライドレイに負けないぐらいに淡白な反応をした。そして少しだけ彼の肩に手を置いて、機関車へとゆっくり歩いていく。
「ライドレイ、荷物を積み込め。それが終わったら客の案内をしておけ」
振り向かずにキーゼはそう命令をした。後ろを向いていたライドレイは、彼がそう話した後に明らかに、性質の悪い咳を何回かしたのを見ていなかった。
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