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白い敷布団に、
青くて薄い夏用の掛け布団が掛けてある。
その上にちょこん、と一世が正座をしていた。
これまた白と青の枕を踏まないようにしながら、一世の正面に僕も釣られて正座する。
数十秒間の静寂。
「……俺、」
おもむろに一世が口を開いた。
僕は視線を自分の膝から一世に移す。
「…本気で山崎君のこと…好きなんだ。」
「うん、」
「もうすぐ、君を置いてここを発つ。」
「うん…」
「君だけ、俺の未練は。」
このまま逝く。
山崎君に会うまで、別に死ぬのは怖くなかった。
でも、
山崎君に会っちゃって、
ずっと山崎君のことばっか考えて…
「君のことだけが、心配。」
「……うん」
「だから、せめて未練を減らしたいから…来世のお願い。」
きっと、次に言われる言葉を僕は知っていた。
酷く緊張する。
来世の願いを使ってまで彼が、
僕にお願いしたいこと。
「一晩だけでいい。俺と…契りを交わしてほしい。」
緊張で泣きそうなのがわかる。
僕はゆっくり頷く。
一世は僕の肩を優しく押した。
ぽふん、と布団に倒れる僕。
少し暑い気温の中、
ひんやりと布団は冷たくて気持ち良かった。
「んっ…」
僕に覆いかぶさる一世は、僕の首筋に唇を落とす。
一世の匂いがする。
お日様みたいな、温かい香り。
心臓、爆発しそう…
僕の服のボタンをゆっくりと外す彼。
恥ずかしいんだけど…
それを上回る、
嬉しいってキモチ。
「いっ、せ…」
ねぇ、
もし戦争なんかしてなかったら、
僕たち出会ってないんだよ?
「んっ…や、そんな…っ恥ずかし…」
「…山崎君、ホントに、イイの?」
「…うん、イイ、よ」
僕も後悔したくない。
一世と、
来世まで、いや、
ずーっと未来まで残る、
聖なる契りを。
「んんんんっ……は、ぁ、」
ねえ、ずっとこのまま、
戦争とか、特攻とか、世界とか、
全部忘れて、
一世と一つでいられたら、良かったのに。
自分の善がる顔とか、恥ずかしくて見せたくないのにな。
「顔…隠さないで見せて。」
こう言って、優しく僕の掌を外しちゃうんだ。
ずるいよ。
「っ、一世、一世ェ…」
もう、切ないくらいに大好きで、
苦しいくらいに愛しくて、
ずっと一緒にいたかった。
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