カップ麺を侮る勿れ

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 もっと端的に言ってしまえば・・・・・・モテない!  そのモテなさは半端なものではなく、合コンについて行っても開始十数分でこっそり帰らされたり、女性職員から職場の他の男性職員みんな(私より年上の社長含む)が貰っている義理チョコすら戴けなかったりと、筋金入りなのである。  私は懇切丁寧にそう教えてさしあげたのだが、両親は己が抱いた観念を真実だと確信しており、私の言葉に耳を傾けることはなかった。  ・・・そうして、私は30歳になってからの9年間、どこからか親が持って来るお見合いに明け暮れた。最後の一年間のペースは異常だったため、受けたお見合いは三桁に届くか届かぬかといった具合であろうか。  勿論、その悉とくが失敗に終わっている。  ・・・。  故に・・・か。  38歳から39歳にレベルアップを果たした夏の終わり頃。  私は『男失格』だの『息子ではない』だのという罵罹雑言を浴びせられながら、実家をほうほうの体で追い出されてしまったのである。  哀愁をひしひしと感じながら、私は食べ終わったラーメンの残り汁を捨て、容器を水洗いしてから燃えないごみ担当のダストボックスに投げ入れた。 「よっこらしょっ」  そしてじじくさい掛け声とともに食卓を横に寄せ、開いたスペースに布団を敷き、その上にゴロゴロと寝転んだ。・・・デブ猫が寝返りを打つ様子と酷似した、実に見目苦しい動き方だと自分でも思ったが、押し寄せてくる疲労感と睡魔が自己嫌悪をどこかへと押し流していく。  低い天井からぶら下がっている蛍光灯の紐を器用に足の指に引っかけて下ろすと、部屋を照らしていた白色光がフッと消え、視界に入る全てのものの色彩が失われた。  蛍光灯を消した後、少しの間ガラスの管に残っている残光を頼りに、2DKの部屋を一度だけぐるりと見回して私はレム睡眠へと移行した。
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