カップ麺を侮る勿れ

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  ~~~~~~~~~~  私はしがないサラリーマンである。  すこし話は逸れるが、サラリーマンという言葉にはどこか虚しさを感じはしないだろうか。  おそらくその言葉を聞いた人はたいてい、少しくたびれたスーツに身を包んだ中肉中背のおっさんを想像してしまうだろう。  だがビジネスマンだとどうだろうか。  英語として訳すとサラリーマンと同義になる言葉であるに関わらず、ビジネスマンという言葉にはキリッとしたスーツを着こなすやり手の印象を受けるだろう。  語感が良いということで最近の若者はビジネスマンという呼称をよく使うみたいだ。  しかし、私はどうにも自分がビジネスマンとは思えない。  鏡を見る。  そこに写っているのは、グレーのスーツと少しずれたネクタイをした、黒ぶち眼鏡の中年である。  そのくたびれ具合といったら、同年代の中でも一、二を争う・・・かもしれない。実際、よく50歳くらいだと勘違いされる。  どうにも、コレをビジネスマンと呼ぶには若干以上の抵抗があるのであった。  右腕につけた安物の腕時計の二本の針を見る。まだもう少し出勤するには余裕があったが、特別時間を潰すものもないこの部屋でわざわざ留まっておく道理はなく、私は底の擦り減った革靴を足に嵌め込み部屋を出た。
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