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「あっくん!」
学校へ向かおうと、家を出たときに抱き着かれた。俺を、あっくんなんてあだ名で呼ぶのは、和泉しかいない。
和泉に抱き着かれて、体勢を崩した俺を見て、あははと笑う和泉。
なに、この子本当ムカつく
顔には出さず、心の中だけで悪言を吐く。いつもなら気にしない、密着した身体さえも気持ち悪さを倍増するものにしかならない。はあ、と溜め息を落とすと、いつもの俺と同じような笑顔を見せた。
「どうしたんだ? そんな息せき切って……」
「えー、あっくんが待ってると思って、早く来たんだよー?」
高校生の男子にしては、まだ幼い、そんなような面影が残っている和泉は、頬を膨らませた。女の子みたいな容姿をしているためか、一般の男子高校生がしたら気持ち悪いであるだろう行動も、和泉がしたら可愛い。
人懐っこい性格で誰にでも好意を持たれるコイツを嫌いな人は少ないだろう。もちろん俺もそうだ。嫌いではない。むしろ、好きな方だ。
だけど、アイツの――悠也の好きとは、違う。和泉はただの友達で、それ以上でも、それ以下でもない。
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