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「や……、やあ」と片手を上げて、ハハハ、とまさに棒読みな笑い方をした俺に顔を歪めた和泉。すぐにその場を立ち去ろうと玄関の方へ向き直ったが、和泉に腕を捕まれて、立ち去ることは出来なかった。
「章人……」
いつも、あっくんなんて呼ぶ可愛い和泉じゃなかった。真剣な眼差しで俺を見る顔は、カッコイイとさえ思った。どこか悠也と似ている気がする。顔が、とかじゃない。時折見せる真剣な表情だったり、我慢して我慢して、自爆するような所だとか、だ。
「い……和泉?」
"?"なんて付けなくてもわかる。だけど疑問形になってしまったのは、俺が和泉を悠也と重ねてしまったから。
「……ふふ、見られちゃったかぁ、あっくんには見られたくなかったけど、学校でした僕が悪いよね……」
章人から、いつもねようにあっくんと呼び方を変えた和泉だったが、いつもの元気な和泉はそこには居なかった。肩を落として沈んでる表情を見せる和泉。だけど口元だけは笑っていて、それが逆に悲しい。
お前、自分で笑えてると思えてるのかよ?
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