進んだ時間は戻らない

3/4
前へ
/9ページ
次へ
 主語がないままに問い掛けられた言葉にドキリとする。主語なんかなくたって分かる。和泉が聞きたいのは俺と悠也のことだ。  ――悠ちゃんといっちゃんが仲良くしてても良いの?  ――悠ちゃんと居なくて良いの?  無言で向けられる視線に、ズキリと胸が痛む。自分自信の気持ちが分からない。それ以上に悠也の気持ちが分からない。  なんで悠也は俺が和泉や他のやつと一緒に居ても何も思わない?  俺は思うのに。悠也が俺以外のやつと話してるだけで、胸がぎゅっと締め付けられて、俺らしくもなく泣きたくなって、俺がだんだん弱くなっていくのに。  なんでお前は、俺みたいな気持ちになんないんだよ?  好きなら普通、嫉妬するもんじゃねーのかよ……。嫉妬して、俺だけを見ろって言って、お互いの気持ちを確かめあって。  こんなことなら、付き合わなければ良かった。  そうしたら悠也が俺から離れることはなかった。俺が悠也から離れることもなかった。  今となってはもう遅い。遅いんだ。  もう無理なんだよ、俺達は……。  
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

140人が本棚に入れています
本棚に追加