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「春君!」
「…ゴホッ…叔父さん?」
ベッドで少年が寝込んでいた。
その少年の部屋に50歳くらいの男が慌てたように入ってきた。
熱があるのか、少年の額には濡れたタオルが置かれている。
「起きれるかい?…急いで来るんだ!」
だが、少年は意味も分からなければ熱が酷くて動けない。
「すまない!」
男はそう言うと少年を抱き上げ、階段を下り家から走って出る。
少年の額からはタオルが落ち、少年の部屋にタオルが残された。
少年は直ぐに車に乗せられる。
助手席で少年は荒い息をあげる。
「すまない……だが、春君…君の家族が――」
その男はそこまで言うと黙り込んでしまった。
少年は理解してしまった。
少年も黙る。
車はただ、静かに目的地に進んで行く。
少年が見たもの。
病室のベッドに眠るように横たわる家族の姿だった。
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