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‡失う‡
2010年…
蘭は14歳になった。
蘭はフランスで生まれたが、両親は共に日本人。
生まれてすぐに日本に来た。
そして今、東京の中学校に通っている。
毎朝、毎朝、飽きるんじゃないかと思うくらい、同じ道を通って学校へ向かう。
まず家の前の坂をくだり、そのまま目の前にある畑の横を歩いていく。
すると次第に、橋が見えてくる。
その橋を渡らずに、橋の横にある道を、川沿いに歩いていく。
その道沿いには、桜の木が、まるでトンネルをつくるかのように何本もたっていて、春には幻想的な世界をみせてくれる。
20分も歩けば、もう中学校に到着だ。
毎日、 一人 で、
この道を歩く。
生まれたときから、いつも隣にあったあの温もりは、もうない――。
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