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川瀬は
「ほんま凄いわ。毎日漫画読むとか俺には無理。目がしんどなるし。」
と言いながら、顎くらいまで伸びた前髪をかきあげる。
これ以上関わっていてもイライラするだけだろうと思った私は、無視をして漫画に目を戻した。
…と同時に小さな舌打ちが聞こえて、私の目の前から漫画が消えてしまった。
「ひょいっと。…んー。」
「あ、ちょっと!」
彼は私から漫画を奪って高く上にあげ、まじまじと見つめる。
私の身長は152cm。
川瀬の身長は175cm。
上の方で持たれてしまうと、どんなに頑張っても届かない…
彼はぴょんぴょんと飛び跳ねる私の姿が可愛いと、たまにこんな意地悪をしてくるのだ。
「んー」と唸りながら、いつものようにチラッと私を見下ろし
「てかさ、そんなにえぇ男なん?この…かおり様ってのは。」
と言って、眉間にシワを寄せた。
「かおりじゃない、馨様!!間違えないでよ。」
椅子の上に立ち、漫画を取り返して睨みつける。
すると、眉間にシワを寄せたまま溜め息をつかれてしまった。
「理想ばっか見ずにいい加減、現実を見た方がえぇで。」
言われなくても…分かってるよ。
現実を見なくちゃいけないって、ちゃんと分かってる。
だけど、どうしても馨様のような人に出会える気がしてならないんだもん。
川瀬は俯く私の隣に座ってさっきよりも小さな溜め息をつき、ギターを手に取った。
「その漫画…アニメ化されたやんな。」
「え?」
そう言ってギターを弾き始めた。
彼が歌ってくれたのは『偽りの花』のオープニングとエンディングだった…
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